令和2年4月法学部発行紹介冊子からの抜粋ですが、その後本人の許諾を得て内容等を一部変更している場合があります。
嶋田 博子
人事院・外務省
1964年山口県生まれ。県立下関西高出身。1986年法学部卒業。1985年国家公務員Ⅰ種(現・総合職)試験合格、1986年人事院入庁。在英国長期在外研究員(オックスフォード大学)、総務庁人事局参事官補佐、外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官、人事院給与局次長、同人材局審議官などを経て、2019年より京都大学公共政策大学院教授(人事政策論)。博士(政策科学)。主著に『職業としての官僚』(2022年岩波新書)。
制度設計のプロという選択肢
~迷うなら、まず学ぶ。
「法学部に入ってすぐ進路を決めるなんて無理、自分の適性もわからない!」と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。私も卒業まで迷い続けました。
自分が好きなのは制度づくりだとようやく気づいたのは、新たな法律を書き上げるため内閣法制局と激論している最中です。官庁の仕事もよく知らぬまま、国家公務員採用試験(法律区分)を受けて人事院に入ってみると、法令担当部署への配属が続き、公務員勤務時間法や任期付職員法の創設にも携わりました。白地に家を描く建築家に似た創造性とイメージ喚起力が求められる職場で、法律を体系立てて学んだ強みを実感しました。自分探しの解が見つからない中、何を決断しても手遅れにならないようにと早めに勉強を始めたのは正解でした。
具体的には、憲法、行政法、民法、刑法、商法に関する科目のほとんどを3回生までに履修しました。どんな進路を選ぶ場合でも無駄にならず、プロとしての足腰作りに役立つと思います。ゼミは民法と行政法で、指導いただいた両教授とも生涯にわたる師となって下さいました。科目名だけで選ばず、人柄も含めて尊敬できる先生を見極めましょう。
他に履修したのは労働法、社会保障法、国際機構法、行政学等ですが、この辺りは興味次第です。政治学系が面白いと思えば、政治・国際区分での受験も選べますし、最近は2回生秋から教養区分も受験可能になったので、ぜひ腕試しを。また、私の受験時はどの区分でも経済原論(ミクロ・マクロ)と財政学が必須科目でしたが、選択制になった今でも政策立案には不可欠な素養なので、履修しておけば採用省庁の幅が広がります。
試験対策としては、問題集や参考書に早くから手を出さないこと。混乱するだけです。大事なのは些事の暗記ではなく骨太の論理的思考です。あらゆる創造は正確な模倣から始まりますから、どの科目でも定評のある教科書に絞って著者に憑依されるまで何度も読み込み、大御所になりきって考えるのが一番の近道です。
なお、どんな進路であれ、法学部生必須の素養として、英語は高いレベルまで仕上げておくことを勧めます。気持ちの余裕がある2回生までに、社交を兼ねて語学レッスンに通うのも楽しいですよ。