令和2年4月法学部発行紹介冊子からの抜粋ですが、その後本人の許諾を得て内容等を一部変更している場合があります。

上田 倫史 うえだ ともひと

弁護士

1984年長崎県生まれ。県立大村高校出身。2006年法学部卒業。2009年に京都大学法科大学院を修了し、司法試験合格を経て、2011年より中本総合法律事務所で勤務(現職)。中国での語学留学を経て(北京語言大学漢語速成学院を修了)、2012~13年に上海市及び広州市の法律事務所で勤務し、中国の企業法務に携わる。

多様なスキルが求められる
職業だからこそ、
基本を大切に。

私は、法律事務所所属の弁護士として、企業法務を中心としつつ、一般民事や刑事などを含め、法律実務全般を取り扱っています。 個々の業務はそれこそ千差万別で、様々な法分野において、豊富な知識や経験を備えていることが望まれます。また、実社会で発生している紛争を解決する上では、既存の知識や経験を機械的に並べるだけではなく、雑多な事実関係を論理的に分析・整理した上で、説得的な法的主張を組み立てていく必要があります。他にも、教養、社会的な感覚、コミュニケーション力など、弁護士が身に付けるべきスキルは実に多くあります。究極的には、弁護士は、「人間力」そのものが問われる職業と言えます。

もっとも、弁護士の業務は、憲法、民法、刑法の三法を中心とした、法律の基本的な知識や理解がないままに務まるものではありません。その中でも、民法は特に重要で、民法を抜きにして処理できる弁護士実務は皆無と言えます。また、憲法を例に挙げると、訴訟などの場で憲法に触れることは稀でも、個別の事案を検討する中で、憲法上の問題点を考慮したり、他の法令の解釈において憲法上の議論を参考にすることは少なくありません。上記三法は、学習範囲が広く、特に初学者には難しく感じられるものですが(私自身、単位がなかなか修得できずに苦労した経験があります)、地道に学習を続ければ、知識や理解が増え、法律家に必要な論理的思考力が徐々に身に付くはずです。このような力は、法律家でなくとも、社会で大いに役立つものですので、上記三法については、将来の進路等に関わらず、積極的に学習いただければと思います。

他方で、学生の皆さんには、資格等に直結する科目ばかりを履修するのではなく、興味・関心のある分野・科目を幅広く履修することをお勧めします。また、報道等を通じて社会問題に関心を持ち、サークル活動を通じて交友関係を育むなど、様々なことに取り組んでいただければと思います。学生時代に熱心に取り組んだことは、受験などのブロセスでは役に立たなくても、将来社会に出れば、必ず大きな経験値となって活きるはずです。