令和2年4月法学部発行紹介冊子からの抜粋ですが、その後本人の許諾を得て内容等を一部変更している場合があります。

長谷川 亜希子 はせがわ あきこ

花王株式会社

1977年福岡県生まれ。1996年福岡県立修猷館高校卒業。2000年京都大学法学部卒業。2000年松下電器株式会社(現パナソニック)入社。2002年ジョージタウン大学ロースクールLL.M卒業。2005年花王株式会社入社。2023年執行役員、法務部門統括。

広がる企業法務領域と
キャリア。

現在、メーカーで企業法務の仕事をしています。企業法務といってもなかなかイメージがわかないかもしれません。会社が法律トラブルや訴訟に巻き込まれたときに対応したり、契約書を締結するときにその内容をチェックしたりするのが主な仕事です。ほかにも、新しい事業を始めるときに関連する法律に抵触しないか検討したり、M&Aの際に買収先の調査やスキーム(どういう形式で買収するのがよいか)の検討を行ったりします。企業法務の領域はどんどん広がっていて、社員の法令・倫理違反を防ぐコンプライアンスや、法令違反を発見する監査の仕事などに携わる場合もあります。会社の機関設計(監査役会を置く形がよいか委員会を置く形がよいか等)や取締役会の構成(規模や社外取締役の比率等)といったコーポレートガバナンスや、人権や環境に関する法令への対応など、ESGの分野も重要になっています。さらには、こうした知識と視点を活かして、法務出身者がビジネスの責任者になるケースも増えています。法務としてリスクや会社の仕組みを考える経験が、経営にも活きるのでしょう。

企業活動がグローバルになっているため、海外とのやり取りも多くなっています。特にデジタルの世界は国境がなく、例えば、海外で取得した個人情報を日本で使う場合など、複数の国の法律を検討する必要があります。こうした問題には、日々、海外子会社の法務責任者とやり取りをしながら対応しています。米国に1年半、中国に半年ほど留学しましたが、そのときの経験やネットワークが今でも役立っています。

京都大学は、よく「自由」だと言われます。確かに一つの正解よりも自分で考えることを重視する校風があるように思います。入試問題の形式を見ても感じますよね。社会に出ると、まさに正解はなく、情報や時間の制約がある中での判断を迫られます。自分の頭で考え、また、先輩や同期と意見を交わした京都大学法学部での経験が基礎になっています。