社会法は、近代市民法によって生じる社会的な問題を修正しようとする法を言います。近代市民法は、自由な資本主義社会の発展を目的としています。そこでは、個人が所有する財産を自由に取引することができ、誰と取引するか、あるいはどのような内容の取引をするかについて、当事者が自由に決定できるということが、基本的な理念となっています。このような近代市民法社会においては、自ら事業を経営して富を築くものがいる一方、多くの者は生活のためにどこかで雇われて働くことが必要になります。このように雇われて働く者は、雇う者よりも交渉力が弱く、不利な労働条件や劣悪な労働環境に陥りがちです。また、働き口を見つけることができない場合には、生活に困窮する可能性もあります。

このような環境にある人々の生活や生命を保障するのが、社会法です。社会法は、大きく分けて、「労働法」と「社会保障法」という二つの分野から構成されます。労働法は、最低限の労働基準や、労働者が団結して、使用者と労働条件等を交渉する際のルールなどを定めています。これに対し、社会保障法は、病気や老齢、失業など生活の安定を損なう出来事が生じたときに、国や地方公共団体等が人々の生活を保障するために金銭やサービス等を支給する社会保障制度に関して、その給付と負担のあり方や運営組織等を定めています。

諸外国の状況を見ても分かるとおり、貧富の差の拡大は、社会全体の不安、治安の悪化に直結します。社会法は、立場の弱い労働者や貧しい人のみを保護するものではなく、企業や富める者を含め、社会全体の平穏を維持するために重要な法ということができるでしょう。

民刑事法(社会法)/社会法島田 裕子

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