行政法とはどんな分野か

法学部のカリキュラムにおいて「行政法」という科目は、「実定法科目」の1つとして位置づけられています。「実定法科目」というのは、「現在の日本で妥当している法規範」について、それを主として「どのように解釈適用すべきか」(解釈論)という関心から扱い、さらに必要に応じて「どのように制度的に改善すべきか」(立法論)という関心から扱うものです。この点では、いわゆる「六法科目」(「憲法」「民法」「刑法」「商法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」)と同様です。そして、法科大学院時代になって、司法試験の必修科目が、「六法」+「行政法」とされたことから、「基本7法」という呼び方も生じています。この考え方によれば、「行政法」とは、「憲法を具体化する国内法のうち、民事法にも刑事法にも属さないもの」ということになりそうです。

他方で、「行政法」という科目は、「公共政策学」の一分野でもあり、公務員試験の重要科目です。そして、政策立案に直接関与できる「霞が関の行政官僚」になる人材こそが法学部の「真のエリート」という考え方もあります。

公法(行政法)/行政法高木 光

法学部における行政法科目

京都大学法学部の行政法科目は,講義と演習に大別されます。

講義科目は,多数の学生が参加するため,教員が教科書やレジュメ等を使って説明することが中心となります。講義科目は,行政法第一部(総論)と行政法第二部(救済法)の各4単位です。行政法第一部では,行政機関の行政活動を規律している行政法規(行政作用法・行政組織法(一部))の基礎にある法的考え方や,私人への働きかけの種類(行為形式)を学びます。行政実務に携わる公務員や,社会問題の解決のための制度設計を考える知識を身につけようとする人にとって,この科目はとても重要です。これに対して行政法第二部では,違法・不当な行政活動により被害を受けた(受けそうな)市民がいかなる救済手段を使ってその被害を除去するかを学びます。具体的には行政不服審査・行政事件訴訟(以上をまとめて「行政争訟」と呼びます)・国家賠償・損失補償(以上をまとめて「国家補償」と呼びます)の4つの分野を勉強します。法曹を目指す場合にはとりわけ重要な科目となります。

演習科目は,20人前後の学生が参加する少人数の編成で,より深く行政法を学びます。その内容は担当教員によっても,また開講時期によっても様々です。例えば,行政事件に関する最新の判例・裁判例を素材に判例評釈を中心にするゼミや,行政法に関するトピック(例:まちづくり,エネルギー問題)を決めて,それに関連する法制度を調査し,問題点を分析した上で改善案を考えるゼミ,さらにはゼミ生が自由にテーマを選択して論文を執筆するゼミもあります。ゼミでは,第一線で活躍する実務家を招いて直接いろいろな話を聞いたり,行政機関に出向いてフィールドワークを行ったりすることもあります。

公法(行政法)/行政法原田 大樹

高校生へのメッセージ

行政法が扱う社会問題の範囲は広く、ごみの収集や自動車の運転免許といった日常的なものから、原子力発電所の設置のような非常に大きなスケールのものまで様々です。行政法は、私たちの生活に驚くほど強く結びついています。

行政法という科目では、みなさんが法律に対して抱いているイメージのとおり、行政と市民との間でもめごとが起こったときに、それを裁判でどのように解決すべきかを考えます。しかしそれだけではありません。行政の仕事は、社会に存在する諸課題の解決を目的としています。その活動が適正に、かつ実効的に行われるためのルールや制度をどのように形作るべきかという視点も、きわめて重要なものとされているのです。国家、社会の仕組みをより深く知るために、そして法的な観点から正義を考えていくために、行政法を学ぶ意義は大きいものといえます。

公務員として公の仕事に携わりたい人はもちろん、弁護士など法律家として正義の実現を目指したい人も、行政の規制のもとでビジネスを展開させる企業で活躍したい人も、そして漠然と法学や京都大学法学部に興味を持ってこのページを見ているあなたも、私たちと一緒に行政法を学んでみませんか。

公法(行政法)/行政法須田 守

余は如何にして行政法学徒となりし乎

各大学では「○○法」という題名の科目が多数開講されていますが、どの科目に関する法律問題も、裁判所に行けば、民事、刑事又は行政事件のいずれかとして扱われます(行政法が基本三科目の一つといわれるゆえんです)。このうち行政事件が占める比率は、地裁レベルではわずかですが、最高裁の合議事件では約1/3にまで跳ね上がるそうです。最高裁判事の方々は、異口同音に「行政事件は難しい。先例も少ないし」とおっしゃいます。最高裁には、通常1名の学者出身判事がいます(現時点では不在)が、このうち5年以上務めた方々のほとんどが行政法学者でした。行政法の分野で、実務が学説をどれだけ頼りにしてきたかが分かりますね。

民法、刑法等の六法と比べて、行政法の最大の特徴は、法典化されていない(行政法という題名の法律は存在しない)ことです。行政法とは、森羅万象ありとあらゆる政策に関する膨大な数の法令の総称であり、これらは毎日のように制定・改廃されています。それにもかかわらず、全体としての統一性・整合性が確保されているのは、実は行政法学あってのことなのです。そんなことをいうと、何だかシュールな話を聞いたと思うかもしれません。けれども、かつては、一見きわめて雑多なローマ法源から一般概念を析出し、理論体系を構築することが、民法学の役割でした(それらを制定法化したのがフランスやドイツの民法典なのです)。現在の行政法学は、この時代の民法学と同じく、すぐれてダイナミックな状況にあるといえるでしょう。

このようなわけで、行政法学の研究を続けていると、気がついたら先行業績のない最前線の領域に出ていたということが少なくありません。世界を縦割りでみるだけでは飽きたらず横串で鳥瞰してみたい人、基礎理論にまでさかのぼって壮大な体系を組み立ててみたい人、抽象的な理念でなく具体的な政策に即して公益と私益の調整のあり方を突きつめてみたい人には、おすすめの科目です。

公法(行政法)/行政法仲野 武志

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