憲法はどんな法分野か

憲法は国の最高法規であり、その統治の仕組みを定めるとともに、国民各人に一定の基本的権利を保障することを主な内容とします。その根幹には、各個人は生まれながらにして自由かつ平等な存在であるという近代的な人権思想があります。そのような人々がともに平和に暮らせる状態を確保するためには、強制的権力を有する国家が必要となります。しかし、国家権力の行使には、人々の基本的な権利を侵害しないよう制約も必要です。憲法は、国家の各機関の権限を個別に定め、さらに法律によっても侵してはならない国民の権利を定めることなどにより、このねらいを果たそうとしています。

皆さんは、日本国憲法の主な条文については、高校までの段階で教わっていることも多いと思います。しかし、大学で学ぶ憲法は、それとはかなり様相が違うかもしれません。大学では、まず近代憲法を思想的に支える立憲主義の基礎理論をかなり深く学習します。さらに、統治機構、人権双方において、他国との比較や最高裁の判例分析をじっくり行い、現在の憲法に関する法状況を学問的観点から批判的に評価できるだけの力を身につけることを目指します。

公法(憲法)/憲法土井 真一

学部における憲法関連科目

法学部で開講されている憲法関連の講義科目は、憲法第一部と憲法第二部の2科目です。

憲法第一部では、まず、憲法に関する基本概念や立憲主義の基本的な考え方など、憲法の総論的な問題を取り扱います。そして、それを前提として、国民主権、天皇制、議院内閣制、裁判所及び地方自治などの統治機構に関する事項を学び、国際協調主義について理解を深めます。

憲法第二部では、基本的人権の保障に関する基礎理論について考察を行った上で、憲法第3章に保障される基本的人権について、最高裁判所の判例を踏まえて、具体的な解釈が行われます。

講義科目以外では、演習科目が毎年度開講され、最高裁判所の判例分析や事例問題の検討、学術論文の講読など、各人が関心に合わせてテーマを選択し、報告・討議が行われています。

公法(憲法)/憲法毛利 透

高校生へのメッセージ

憲法は国家の基本法として人権保障や民主政の仕組みを定めるもので、国の活動全般を規律する基本的なルールです。したがって、憲法の学修は狭い意味での法律家(裁判官、検察官、弁護士)のほか、行政官等を進路として考えている皆さんにとっても必須です。そもそも、希望進路は何であれ、みなさんは主権者の一員として国のあり方を考える立場にありますので、憲法をぜひ学んでもらいたいと思います。

憲法については高校の授業でも一通り学んでいることと思いますが、大学で学ぶ憲法はそれとは大きく違います。憲法は条文が少ないだけに、それを理解するためには、単に条文に書いてあることを見るだけではなく、条文の背後にある歴史や思想をも踏まえることが重要です。言い換えれば、憲法の学修は、現実社会の問題を実践的に考える上で必要であるだけではなく、より深く歴史や思想を学ぶ扉ともなるのです。みなさんも憲法を学んで、この広く深い世界を楽しんで下さい。

公法(憲法)/憲法曽我部 真裕

憲法学の最前線・研究者志望者へのメッセージ

憲法学は、法学の中にあって、自由で多彩な研究を行うことができる学問分野です。

学問の対象領域も、国家や法の基礎理論など、非常に抽象的で理論的な問題から、統治制度や政治の在り方に関わる問題、そして、日々の生活の中で生じる基本的人権に関する紛争の解決などの具体的な問題まで、広く取り扱われています。また、学問的方法についても、法解釈学だけではなく、哲学・倫理学、歴史学、政治学や社会学などの手法が広く取り入れられています。憲法学の研究には、広い視野から憲法に関わる事象を多角的に考察できることが求められます。

さらに、憲法の領域においては、基本的な価値観や原理・原則に関する意見の対立も多く見受けられます。それゆえ、いまだ解答がない問題に粘り強く取り組む姿勢や、様々な価値観や考え方に対して耳を傾ける寛容さ、そして事実や論拠に基づいて公正に判断し、合意を形成していく力などが求められます。

こうした中で、京都大学の憲法学研究は、自由と自主独立の理念を大切にする学風を引き継いできています。憲法学に関心を持つ皆さんには、法学部の4年間において、全学共通科目などの学習を通じて、他の学問分野に対する関心を深めてもらうととともに、法学・政治学に関する専門科目に取り組み、専門的な知識のみならず、論理的な思考力、公正な判断力そして創造的な構想力を身につけていただきたいと思います。

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