政治学(政策、行政)とはどんな分野か

政治学(政策、行政)は、権力者は誰か、官僚制はいかに組織されているのか、政策はどのようにして形成され執行されるのか、といった政治現象の実態・・を実証的、経験的に分析し、明らかにしていく分野です。その意味で中学・高校までの公民、政治経済で教わる内容とは少し違うかもしれません。たとえば中高では三権分立の姿として三角形の絵が示されることが多いと思います。しかし日本のような議院内閣制においては、行政府の長たる内閣総理大臣は、与党第一党の党首であり、立法府のリーダーでもあるわけです。三角形は建前・・であり、立法府と行政府の融合こそが実態・・でしょう。あるいは日本では有権者の政治関心が低いために投票率が低く、啓発的な教育が必要だとの意見をしばしば耳にします。しかし日本の投票率は本当に低いのでしょうか。調べてみると、投票率には年齢(あるいは世代)ごと、選挙の種類ごと、地域ごとの大きな違いがあること、先進国でも義務投票制を採用している国を除けば、平均的な水準であることがわかります。そのような違いを把握し、その原因を解明することなく、一律に教育をしてみても十分な効果は期待できないでしょう。

このように政治学(政策、行政)分野では、現在の様々な政治現象を捉え、その仕組みを分析していきます。またそのためにこの分野で発展してきた概念、理論、分析方法などを学んでいくことになります。

政治学/「政治原論」等担当建林 正彦

法学部における政治学(政策、行政)科目

講義科目としては、まず、1年次に配当されている科目として、「政治学入門II」があります。法学部生のほとんどが受講するこの科目では、現在の政治現象を捉えるための基本的な視点や、政治学という学問の特徴を知ることとなります。高校までの学習を基礎として、大学における政治学をいかに学んでいけばよいのか、その橋渡しとなる科目です。

その上で、2年次以降に履修できるものとして、「政治原論」「政治過程論」「行政学」「公共政策」「Japanese Politics from a Comparative Perspective」といった五つの講義科目があります。これらの五つの科目は、相互に重なるところもありつつ、現代政治の異なる側面を重点的に取り扱っています。

「政治原論」では、主に政党や議会に焦点をあてます。これらのあり方を大きく決める要因として、選挙制度や執政制度といった政治制度に注目していきます。統計分析を用いた研究成果の紹介や、ゲーム理論を用いた理論的な視点なども取り入れ、社会科学としての政治学の姿を伝える講義となっています。「行政学」も同様の視点に基づきつつ、官僚に焦点をあてる科目です。一方では官僚組織の中身を掘り下げ、他方では、地方自治体や国際組織における行政活動にも目を向けていきます。社会学や経営学に近い要素もあり、幅広い事象を扱う講義です。

「政治過程論」では、福祉国家を鍵としながら現代の政治を捉えていきます。社会保障のあり方はその国で生きていく人々の暮らしに直結し、経済活動にも大きな影響を与えるだけに、各国の政治の大きな争点でもあります。政治と社会・経済の関係を捉える視座を与える科目です。その点では、「公共政策」という科目も同様です。公共政策がいかに形成され、それがどのような影響をもつのか。科学的にこれらを解き明かしていくことで、エビデンスに基づく公共政策のあり方を考える基礎を与える。これが公共政策の目標の一つです。

これらのいずれの科目も、現代日本の政治や行政を扱いつつ、それを他国との比較の中から位置づける視点をもっています。それをより明示的に打ち出し、英語での講義を行っているのが、「Japanese Politics from a Comparative Perspective」です。日本政治の理解を深めつつ、英語での読み書きの力も高めることができる一挙両得の科目です。

演習科目においては、研究論文を正確に読む能力を高めたり、具体的な政策課題への検討を深め、相互に議論を行ったり、各自の問題関心に基づく研究を進め、論文執筆を行ったりと、多様な目的と形式の科目が用意されています。現代政治についての理解を深めると同時に、読み、書き、議論するといった経験を積み、情報処理や統計分析の能力を高めるような場となるよう、各教員が工夫を凝らしたゼミを提供しています。

政治学/「行政学」等担当曽我 謙悟

高校生へのメッセージ

多くの高校生の皆さんにとって、政治は縁遠いものかもしれません。ニュースで政治の話題を目にしても、疑問ばかりが浮かんでくる。そんな経験はないでしょうか。変化が激しい時代ですから、余計に難しく感じるかもしれません。

政治学(政策、行政)では、変貌著しい現在の政治を分析しています。たとえば、ある政策が採用されたのはなぜなのか。政党はどのように市民の声をすくい上げているのか。官僚組織はどのように政策決定にかかわっているのか。私たちが暮らしている街の政治、日本の政治、諸外国の政治を対象として、こうした問題について考えています。理論を用いたり、現場調査をしたり、複数の国・地域ないし時代を比較することによって、それぞれの「問い」を解き明かそうとしています。

京都大学法学部では、政治原論、行政学、政治過程論、公共政策、Japanese Politicsfrom a Comparative Perspectiveといった講義と、それぞれの科目にそった少人数教育(演習)が行われています。政策・行政にかかわる多様なアプローチを学ぶ機会が提供されています。公務員として働きたいと考えている人、身近な問題や広く社会一般の問題に関心がある人、そしていまはまだ関心がはっきりとしていない人も大歓迎です。ぜひ政治学(政策、行政)の門を叩いてみてください。

政治学/「政治過程論」等担当近藤 正基

研究紹介―What I research: what difference local politics makes.

Local government is often said to be a “school for democracy” and a “bulwark against the tyranny of a centralized state”. Moreover, it is said that “all politics is local”. Despite these positive associations, confidence and participation in local governments have become quite low in many countries.

Japan is no exception. Fewer and fewer citizens vote in local elections. Shortages of candidates result in a lack of diversity and accountability in many communities. Residents voice frustration at the corruption and perceived incompetence of local representatives, calling to reduce assembly size and salaries.

Why does this unhappy situation arise?

My research focuses on this gap between the potential of local politics to improve society and its actual, often disappointing, reality.

There are many reasons which need to be investigated as to why local democracy does not seem to work as many people wish. For example, we need to look at how local politicians are elected, including the rules which determine who become candidates and how they communicate and connect with voters. We also need to understand the powers these local politicians have to deliver what residents demand, including the limits placed by the laws and regulations set by the central government. In an age where international capital dominates, we cannot overlook how the local politics of communities are shaped by market forces. These constraints on local autonomy need to be understand holistically.

In my research, I have tried to research these critical features which appear to limit local government performance.

There are no simple answers, but the issue is increasingly essential. In Japan and elsewhere, local governments are at the frontline of dealing with critical social challenges from effective welfare delivery, rural depopulation and urban over-congestion, climate change, multiculturalism, and inter-regional inequality, among other things.

Please join me to think about how local governments can make a difference in these areas in an increasingly globalized world.

政治学/「Japanese Politics from a Comparative Perspective」等担当
HIJINO, Ken Victor Leonard(ヒジノ・ケン=ビクター=レオナード)

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