修了生インタビュー

山田 哲史 やまだ さとし

京都大学大学院
法学研究科
教授

平成24年3月法政理論専攻博士後期課程修了

私は、学部卒業後、法科大学院を経由して法政理論専攻の博士後期課程に進学しました。学部時代から、研究者と実務家を進路として半々ぐらいに考えていましたが、法科大学院での学習に馴染みきれないところが多く、じっくりと腰を据えて興味のあることを研究する方がやはり自分には向いていると思ったのが、進学の大きな理由です。とはいえ、専攻分野に選んだ憲法について言えば、興味関心は大きいものの、法科大学院における成績はお世辞にも優秀とは言えず、進学当初は、修士課程において研究者としての修行を受けていないことへの引け目や、ほぼ初めて触れることになったドイツ語の文献の読解という課題を前に、果たして自分に3年間で博士学位に値する論文が書けるものか、大きな不安を抱えていたのも事実です。

それでも、ドイツ公法を専攻する先輩や同じ憲法研究室の先輩方が、生意気な私の性格にもかかわらず、ドイツ公法学や研究生活の「いろは」を、明に暗に示してくださったので徐々に研究生活に打ち込んでいけるようになりました。博士課程在籍1年目の終わり頃には、いつまでも向上しないドイツ語力に若干の絶望を覚え、多少の迷走を経験したものの、課程学位を積極的に認定する方針が採用されたおかげもあり、3年間でなんとか学位を取得することができました。教員の陣容が充実していることはもちろんのこと、優秀な先輩や後輩に囲まれ、互いに切磋琢磨し、時には議論を深めながら研究を進められることは、京都大学大学院法学研究科で学ぶことの大きなメリットだと思います。

博士課程では、修了に必要な単位数は最小限に留められており、私は、憲法関連の2つのスクーリングに3年間通じて出席した他は、ドイツ法スクーリングに半期だけ出席したのみで−今になってみると、もう少し多くのスクーリングを受講しておけばよかったと思わなくもありませんが−他は自分の研究に打ち込みました。私の指導教授は、事細かに研究の内容について指導する方ではありませんが、こちらからの質問や相談には丁寧に対応していただけました。とりわけ英米を中心とする諸外国の大学に比して、京都大学に限らず日本の法学の大学院教育は、体系的な研究方法論の教授、伝授が不十分なのではないかと最近では思わないこともありませんが、独立した研究者として研究活動を進めていく力は、指導教授の指図を忠実に実行するだけでは得られないので、人に指図されることが何よりも苦手な私の性格も手伝って、(少なくとも当時の私にとって)大変ありがたい環境を提供していただいたと思っています。また、研究環境面については、京都大学には、法学部図書室を中心に、充実した内外の法学文献の蔵書が存在しており、研究の大きな助けとなったことも指摘しておかねばならないでしょう。

次に、大学院時代の生活面について触れておくと、ここでは法科大学院修了者であるということが幸いして、京都大学法科大学院の教育補助スタッフや、他大学の法科大学院のティーチング・アシスタントとして、一定の収入を得ることができました。さらに、博士課程3年次には、運よく日本学術振興会の特別研究員(DC2)に採用されるとともに、法科大学院修了研究者養成プログラムの開始にともなう大学からの援助の拡充も重なって、研究に集中できたのは大変ありがたいことでした。

最後に、現在の仕事との関係でいえば、博士課程在籍時の研究が現在の研究内容にも直結していますので、まさに大学院生活での経験が生きているということができるでしょう。また、先に触れた、教育補助スタッフやティーチング・アシスタントとしての経験は、生活面での援助となっただけではなく、現在大学教員として教育を行う上で貴重な糧となっています。

一人でも多くの方が、京都大学大学院法学研究科に入学・進学され、そこでの充実した研究生活を経て、次代の日本の法学・政治学研究を担う人材となっていただければと思います。

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