修了生インタビュー

中村 知里 なかむら ちさと

関西大学
法学部
准教授

平成29年3月法政理論専攻博士後期課程修了

私は法学部卒業後法科大学院に進学し、当時は弁護士や裁判官を志していました。しかし研究者養成制度に関する説明会等をきっかけに研究者という進路も意識するようになり、また、国際私法のリサーチペーパーを書くにあたり、文献を調査し、理論的な分析を行い、短いながらも論文を書くということを面白く感じたことで、博士後期課程に進学することを決めました。

 法科大学院からの進学で研究の仕方もよく分からない私たちにとって、外国法文献の読解や外国法の文献調査の方法に関するスクーリングが開講されているのは僥倖でした。1年目は国際私法のスクーリングに加え、ドイツ民法に関する文献読解やドイツ法の調査に関するスクーリングにも出席させていただいて、ドイツ語の読み方やドイツ法に関する文献の検索方法等、研究の基礎となることを沢山教えていただきました。今思うと、このような法科大学院からの進学者向けのカリキュラムがなければ、研究の初めの段階で大きく躓いていたような気がします。

このようなスクーリングの他にも、私はEU法に関するスクーリングに参加させていただいていました。このスクーリングはEUに関連するテーマについて参加者がそれぞれドイツ語で報告し議論するもので、参加者の専攻する分野は民法や民事訴訟法などさまざまです。そのため、報告内容はそれぞれの専門分野からなされる興味深いものであり、なかなか自分では触れるきっかけのない領域まで幅広く考える機会になったと思います。また、私は自身の研究テーマであったインターネット上での人格権侵害に関連した報告をし、普段得られない目線からの意見をもらうことができました。このように、自身の専攻分野に限らず、さまざまな先生方や院生の皆さんと関わり、議論することのできる環境はとても恵まれていたと思います。特に私の研究テーマが人格権と国際裁判管轄に関するもので、民法や憲法、民事訴訟法等他の分野とも関わるものであったため、さまざまな勉強の機会を与えていただけて大変ありがたかったです。

博論の執筆自体は決して順調なものではなく、考えていることを論文として書き上げることの難しさを何度も痛感しました。ペースが遅くなかなか文章にできない私でしたが、辛抱強く見守ってくださった指導教授の先生をはじめ、多くの人にお世話になり、なんとか3年で博士号を取得することができました。これから研究していきたいことも博論の内容と連続しているものですし、博士後期課程の3年間はこれからの研究生活の基礎をなしていくものだと思います。そして上述のように幅広い分野に触れることができたことは、今後、広い視野を持ち多面的な研究を行う上で役立つものと思っています。

初めに触れたように、私自身法科大学院に進学した時点では研究者になることを考えていませんでした。博士後期課程に進学することには不安もありましたが、そこでの研究は充実したもので、ワクワクすることも沢山ありました。是非、多くの方に研究者という進路も意識していただいて、さらには京都大学大学院法学研究科の素晴らしい環境の中で充実した研究生活を送っていただけたらと思います。

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