法学研究科長からのご挨拶
法学研究科長 唐渡 晃弘

 京都大学法学研究科・法学部の歴史は、明治32(1899)年の京都帝国大学法科大学の開設にさかのぼります。以来、学制改革による京都帝国大学法学部への改組(大正8〔1919〕年)、新制京都大学大学院法学研究科の発足(昭和28〔1953〕年)、いわゆる大学院重点化による講座の再編並びに修士課程における専修コースの新設(平成4〔1992〕年)、附属法政実務交流センターの開設(平成10〔1998〕年)、国立大学の法人化及び法政理論専攻・国際公共政策専攻・法曹養成専攻(法科大学院)の三専攻体制への組織再編(平成16〔2004〕年)、国際公共政策専攻の公共政策大学院への発展的解消(平成18〔2006〕年)、修士課程における先端法務コースの新設(平成28〔2016〕年)、教員組織としての学域・学系制度の導入(平成28〔2016〕年)、附属法政実務交流センターの附属法政策共同研究センターへの発展的解消(令和3〔2021〕などの制度改革を行いつつ、本法学研究科は、日本の法学・政治学研究の中心として、学問の発展に大きな貢献をし、多くの人材を輩出してきました。修了生が、学界、政界、官界、経済界、法曹界、国際機関やジャーナリズムの世界など、多岐にわたる分野で指導的な役割を果たし、日本社会、さらに国際社会で活躍してきたことは周知の事実と思われます。
 このような伝統を育んできた背景に、京都大学のもつ自由の学風があります。それは、教員と学生が分け隔てなく自由に討議を重ねるなかで、それぞれの思考を磨き、真理に迫ろうとする真摯な姿勢となって、また、真理を歪めようとする外部からの不当な干渉に屈することなく、学問の自由を守り抜く断固たる態度となって表れています。これらは本法学研究科・法学部の存立基盤をなす思想であり、将来にわたって確実に受け継がれていかなければならない精神であると確信しています。
 本法学研究科は、刻一刻と変化する社会状況にも鋭敏かつ柔軟に対応してきました。制度的な対応としては、令和3(2021)年4月に、先端的な法政策課題に関する共同研究を行い、その成果を社会及び教育に還元することを目的として附属法政策共同研究センターを設立しました。そこでは、最先端の学術的・実務的知見を備えた教員による研究・教育、他の研究機関や企業との共同研究、国際シンポジウムの企画・開催などが行われます。法学・政治学の理論研究の枠を超えた学際的・国際的で、新しい学術領域を切り開くような研究と教育並びに人材育成のための組織がスタートしたことに大きな意義があります。現在、担当教員の拡充を進めており、本センターが産み出す成果にご注目をいただきたいと思います。
 本法学研究科・法学部には、令和5(2023)年4月現在、教授55名、准教授7名、さらに主として法科大学院の教育にあたる実務家教員4名が在籍し、それぞれの専門分野において一線級の研究を行い、その知見を生かし、学生に対する研究指導に当たっています。その成果の社会への発信・還元にも十分に注力しながら、今後とも本法学研究科に期待される社会的使命を着実に果たしていきたいと考えています。

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