令和2年4月法学部発行紹介冊子からの抜粋ですが、その後本人の許諾を得て内容等を一部変更している場合があります。

宇治 梓紗 うじ あずさ

京都大学 大学院法学研究科 准教授

大阪府・金蘭千里高等学校出身。2012年法学部卒業。2018年京都大学法学研究科法政理論専攻博士後期課程修了(博士(法学))。京都大学大学院法学研究科助教、講師を経て、京都大学大学院法学研究科准教授。ハーバード大学大学院などで在外研究。専門は国際政治経済学、グローバルガバナンス。

学問的思考を通じて
国際問題の本質を見抜く

私は政治学者として、どのような条件の下で、国々が利益対立を乗り越えて、国際問題をめぐる協調が可能になるのかを実証的に研究しています。学術研究とは、これまでに誰も指摘してこなかった新たな見解を、科学的な検証を行なった上で、世の中に提示するという作業です。研究では客観性や厳格さが求められますが、独創的なアイデアと論理的な美しさを探究する余地があり、アートを生み出すような側面もあります。研究自体は級密な作業で多くの苦労を伴いますが、自身が考え抜いた物事へのーつの見方を、学者や政策担当者、―般の方に伝えることに、大きなやり甲斐を感じています。

法学部の授業は、当時の私の生活の中で、最もワクワクする瞬間でした。現実の世界は限られた空間ですが、知は世界を無限大に広げてくれます。講義で学問的な思考法を習得することで、現象を多角的に捉えることができ、また異なる講義で学んだ内容が相互につながってくると、世界がよりクリアに見えてくるという大きな喜びがありました。政治学、法学、経済学は専門領域として分かれている一方、実社会では、各領域が着目する要素は密接に結びついていています。政治系、法学系科目と予め区別するのでなく、いろいろな講義やゼミに参加することで、物事を深く理解することができるはずです。

学問は、学者だけのためにあるのではありません。既存の考え方を疑い、分析を通じて物事の本質を捉えるという学問的な思考は、ひいてはバランス感覚をもって物事を判断し、スマートな決定を行うことにつながります。こうした姿勢は、職業を問わず、何か大きな成果を達成するために不可欠ではないでしょうか。しかし、スピードと効率性が求められる今日の社会では、こうした「突き詰めて考える」という姿勢がないがしろにされがちです。在学中の4年間、授業で得た知をご自身の考え方へと昇華させることを意識しながら、人生の礎となる学問的思考を磨いてください。