京都大学法学部における「学び」について―とある法学部の先生に聞く

1.学生の自主性を重んじるのが京都大学法学部

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京都大学法学部のカリキュラムの最大の特徴はなんでしょう。
法学部では法律学と政治学が学習の対象となりますが、京都大学法学部では法律学科と政治学科というような分け方がされていません。また、法曹志望者のために本学法科大学院と連携して法曹基礎プログラムを設けている以外、特定の職業を目指すためのコース制もとっていません。関心のある法律系の科目と政治系の科目を履修できるようになっており、その中で学生自身に自分の進むべき道を見つけてもらうというのが基本的な発想です。その意味で、科目の選択も含めて、学生の自主性を重んじる京都大学の伝統が法学部には生きているということでしょう。
京都大学法学部が学生の自主性を重んじるのはなぜですか。
法学部に入学する学生の中には、法曹や国家公務員になるという明確な目標をもっている者もいますが、むしろそうしたはっきりしたヴィジョンをもっていないまま入学する学生も多いのです。入学してからさまざまな方向を模索してもらうためには、制約が少ない方がいいと考えられるからです。入学時点でほとんどの学生は18歳くらいでしょうし、そのような年齢で最初からレールを敷いて進路を規定しすぎては、その学生の将来の可能性を狭めてしまうことにもなりかねませんから。

2.授業に濃密に取り組むために-「キャップ制」の意義

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まず入学して1年目の1回生になると、どのような法学部の授業に出席できるのでしょうか。
1回生のうちは、語学その他の一般教養科目の履修が中心となりますが、法学部の先生が提供する専門科目として、「法学入門」「政治学入門Ⅰ・Ⅱ」「家族と法」「法学政治学基礎演習A・B」といった科目を受講することができます。こうした科目を受講しながら、幅広い教養を身につけてください。
2年目の2回生になると専門科目の数が増えるということでしょうか。
その通りです。2回生から専門科目の勉強が本格化します。ただし、法学部では1年間に履修できる専門科目の単位数に上限を設ける「キャップ制」という制度を採用しています。卒業に必要な専門科目の単位数は80ですが、こうした上限を設けることで、きちんと段階的に学習してもらうことにしているのです。おおまかにいって、2回生と3回生は36単位、4回生は40単位を上限としています。ですから、たとえば、入学してから3回生までほとんど単位をとらず、4回生になって1年で単位をかき集めて卒業するということはできないことになっているのです。
京都大学では1年が前期と後期に分かれていて、法学部の専門科目は前期(または後期)に週1回の授業と週2回の授業がありますね。
科目によって、週1回(1コマ90分)と週2回(2コマ)があります。1コマの授業は2単位、2コマの授業は4単位の授業ということになります。 「キャップ制」の下では、たとえば3回生は36単位が上限となりますが、半期で考えると1週間に9コマです。9コマということは、月曜から金曜までの5日間で、1日2コマくらいのイメージです。1日に2コマというのはスカスカな時間割だと思われるかもしれませんが、大学での勉強は、授業に出席することに加えて、自宅や図書館での予習・復習を行うことを前提としており、それを考えると1年間に36~40単位をきちんと習得することは決して容易なことではないのです。つまり、一つ一つの授業に濃密に取り組んでほしいということが、この「キャップ制」の趣旨なのです。

3.少人数教育の場としての「ゼミ」

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3回生になると、受講できるさらに専門科目も増えるほか、ゼミも始まりますね。京都大学法学部のゼミの特徴とは何でしょう。
京都大学法学部のゼミは必修ではありませんが、ほとんどの学生が受講しています。それぞれの分野で一流の法学部教員が、様々なテーマについて身近に議論してくれる。そしていっしょに議論する同級生も優秀な学生ばかりです。ゼミで報告するためにリサーチをしようと思えば、法学・政治学のことならいかなることも調べられるほど蔵書量の豊富な図書館もあります。こうした環境を利用しない手はありません。 ゼミには、より専門的な学術的知識を修得したり、リサーチ能力を向上させたりといったさまざまな意義がありますが、人前でプレゼンテーションをして、そのプレゼンテーションを受けて議論をする貴重な練習の場ということもあります。プレゼンテーションと議論は、法律家でも公務員でも民間企業でも、どの世界でも必要とされていることです。学生のうちだからこそ恥をかいても笑って済ませられるので、そうした鍛錬を楽しく行ってもらいたいですね。

4.卒業を控えて

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大学生活4年目ともなると卒業も間近になりますが、気を付けた方がいいことなどアドヴァイスはありますか。
3回生の半ばくらいからですが、民間企業への就職活動の準備や、法曹志望であれば法科大学院入試準備、各種公務員を志望するのであれば公務員試験の勉強、さらに研究者になりたいということであれば、京都大学大学院法学研究科の法政理論専攻修士課程の受験準備など、授業以外のことがいろいろと忙しくなってきます。しかし、そうしたことが気になって卒業に必要な単位数を取得できないと元も子もないですから、必要な単位をあまりたくさん残さないようにして、進路を踏まえた学習ができるよう工夫してほしいですね。